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「講談社の動く図鑑MOVE」とコラボ企画
ここが目のつけどころ! 図鑑執筆者が解説する野毛山動物園を10倍楽しむ方法

PICKUP

みなとみらい21地区を一望できる高台に位置する「野毛山動物園」。
JR桜木町駅から歩いてわずか15分というアクセスの良さに加え、うれしいことに入園は無料! 現在、園内ではさまざまな施設のリニューアルが進行中で、ますます魅力がアップ。講談社の動く図鑑MOVE『動物』を執筆した専門家の目線から、そんな野毛山動物園の注目動物や、より楽しむための“動物園歩きのコツ”をご紹介します。

profile

柴田 佳秀(しばた よしひで)

科学ジャーナリスト
柴田 佳秀(しばた よしひで)

MOVE「動物」「鳥」「危険生物」「生きもののふしぎ」等の執筆者。元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。著作にカラスの常識、あした出会える野鳥100など。日本鳥学会会員。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。

行く前に知っておきたい“おもしろくなる最大のコツ”

さっそく園内へと行きたいところですが、その前に、動物園がおもしろくなる最大のコツをお伝えしましょう。それは「できるだけ朝早く訪れる」こと。野毛山動物園は朝9時半に開園しますが、開園と同時に入るのがおすすめ。午前中は動物たちの動きが活発で、ちょうどエサの時間にあたることも多いため、生き生きとした姿を観察できます。
入り口の案内所。園内マップを忘れずにもらいましょう。
入り口の案内所。園内マップを忘れずにもらいましょう。
園内は坂や階段が多いので、ベビーカーだとちょっと大変かも。案内所の裏にはベビーカー置き場が設置されているので、ここに預けるのもお勧めです
園内は坂や階段が多いので、ベビーカーだとちょっと大変かも。
案内所の裏にはベビーカー置き場が設置されているので、ここに預けるのもお勧めです

見ないと損!野毛山のレア動物たち

さあ、いよいよ園内に入りました。野毛山動物園はとてもコンパクトな動物園で、ざっと見て回るだけなら1時間ほどで足りるでしょうか。しかし、それだけで切り上げてしまうのは本当にもったいない! というのも、日本ではここでしか会えない、とても貴重な動物がいるから。ぜひ、じっくりと観察して欲しいと思います。

その中でも私が特におすすめしたいのが「カグー」という鳥。日本動物園水族館協会に加盟している動物園は全国に91園(2025年9月現在)もありますが、このカグーを展示しているのは、ここ野毛山動物園だけ。本当に特別な存在なのです。

オスのカグーが2羽展示されています。名前は「ムラリン」と「ミドリン」。足につけられている色足輪が名前の由来です。
オスのカグーが2羽展示されています。名前は「ムラリン」と「ミドリン」。
足につけられている色足輪が名前の由来です。

カグーは「世界的な珍鳥」としても知られています。生息地はオーストラリアの東に位置するフランス領ニューカレドニアの島。その島の森だけに生息する固有種で、世界中に同じなかまがいない「一属一種」の鳥です。立派な翼を持ちながらも、飛ぶための筋肉が発達していないため空を飛ぶことができません。島に天敵がいなかったため、進化の過程で飛ぶ必要性を失ってしまったのです。

カグーがいる展示場。鳥が奥に隠れていることもあるので、じっくり時間をかけるか、何度かチャレンジすると近くに出ていることがあります。
カグーがいる展示場。鳥が奥に隠れていることもあるので、じっくり時間をかけるか、何度かチャレンジすると近くに出ていることがあります。

さらに注目すべきは、その独特な鳴き声。なんと犬のように「ワンワン」と大きな声で鳴くのです。今回は、その貴重なシーンを撮影することができました。ぜひ動画でご覧ください。ただし、かなり大きな声ですので音量にはご注意を!


オグロワラビーも、野毛山動物園にしかいない動物です。午後は寝ていることが多いので、午前中の早い時間にいくと、エサを食べているところが見られるのでおすすめです。

オグロワラビーオーストラリア北東部の森や湿地にすむ小型のカンガルーです。
オグロワラビー
オーストラリア北東部の森や湿地にすむ小型のカンガルーです。

パンダよりもレア!? 希少種が集まる「は虫類館」

動物園に来たら絶対に立ち寄りたいのが「は虫類館」。ワニにヘビ、トカゲ…ちょっとスリルのあるなかまたちが待ち構えています。そして、この館でとくに目を引くのがカメ。「カメってどこにでもいるでしょ?」と思ったら大間違い! ここにいるカメやワニの多くは絶滅危惧種で、その希少さはなんとジャイアントパンダ以上という種類もいるのです。
なかでも必見なのが「ヘサキリクガメ」「バタグールガメ」。この2種に出会えるのは、日本では野毛山動物園だけ! まさに“ここだけでしか出会えない”、とても貴重な存在です。

貴重なヘサキリクガメの展示。動物園で生まれた子亀がいました。
貴重なヘサキリクガメの展示。動物園で生まれた子亀がいました。

ヘサキリクガメはマダガスカル島に生息するカメで、野生の個体数はわずか100~400頭と推定され、まさに絶滅寸前の状況にあります。野毛山動物園ではその繁殖に成功しており、種の存続を守るために大きな役割を果たしてます。

ヘサキリクガメの子ども。これまで12頭が野毛山動物園で誕生しています。
ヘサキリクガメの子ども。これまで12頭が野毛山動物園で誕生しています。

さらにバタグールガメは、インドや東南アジアに生息する大きなカメですが、野生個体はなんと100頭以下! 世界で最も絶滅が心配されているカメのひとつで、生きている姿に出会えるのはまさに奇跡に近いことなのです。

巨大なバタグールガメ。密輸で摘発された個体が保護されました。
巨大なバタグールガメ。密輸で摘発された個体が保護されました。

キリンの観察ポイントはこれ!

野毛山動物園の魅力のひとつは、なんといっても動物との距離が近いこと。なかでもキリンは、驚くほど近くにやってきて大迫力! とくに好奇心旺盛な「そら」君は、目の前まで顔をぐいっと突き出してくれるんですよ。
動物園のいいところは、やはり“本物”に会えること。キリンの大きさや存在感を肌で感じられるのは、絵本や映像ではけっして味わえない特別な体験です。
好奇心旺盛のそら君。この日も顔をぐいっと近づけてくれました。
好奇心旺盛のそら君。この日も顔をぐいっと近づけてくれました。

近くに来てくれたら、キリンの体をじっくり観察するチャンス。長いまつ毛、短い角、メガホンのような形の耳など、細かいところに注目すると、新しい発見がたくさんあります。

そして忘れてはいけないのが、キリン最大の特徴である“舌”。長く伸びる舌を器用に使って、木の葉や草を食べる姿はずっと見ていても飽きません。

落ち葉を舌先にくっつけて食べる。舌の色にも注目です。
落ち葉を舌先にくっつけて食べる。舌の色にも注目です。

キリン観察のマニアックポイント

次にご紹介するのは、ちょっと通な観察ポイント「反芻(はんすう)」です。反芻とは、1度飲み込んだ食べものを胃から口にもどして、もう一度かむことで消化を助ける仕組み。ウシやシカ、そしてキリンなどの草食動物でみられる特徴です。

キリンの反芻観察がおもしろいのは、食べものが長い首を通る様子が目に見えてわかること! 首をよーく見ていると、モコッとした塊が口と胃を行ったり来たりする様子が観察できます。

今回は、その様子を動画に収めてみました。口のもぐもぐが終わった瞬間の喉元に注目してください。矢印で示したふくらみが喉から下に降りて、しばらくすると戻ってくるのがわかると思います。 初見だとわかりにくいかもしれませんが、繰り返し見ればきっと確認できるはずです。知っているとさらに楽しくなる、マニアックな観察ポイントだと思います。


快適さを求めて リニューアルが進行中!

現在、野毛山動物園では市民の皆様と動物たちがより快適に過ごせるためにリニューアルが進行中です。その第一弾として、なかよし広場やなかよし休憩所、トイレ棟がオープンしました。
なかよし広場。屋根がつき、天候に左右されずにふれあい体験が楽しめるようになりました。
なかよし広場。屋根がつき、天候に左右されずにふれあい体験が楽しめるようになりました。
動物のイラストが楽しいトイレ。子どもたちはウキウキ気分で利用できますね。
動物のイラストが楽しいトイレ。子どもたちはウキウキ気分で利用できますね。
なかよし休憩所。冷暖房完備で夏の暑さや冬の寒さでも快適にすごせるようになりました。
なかよし休憩所。冷暖房完備で夏の暑さや冬の寒さでも快適にすごせるようになりました。

夏の暑さでも安心! 快適なふれあい体験

私が動物園を訪れた日は、最高気温32℃という真夏日。この日のふれあい体験は、なかよし広場ではなく、なかよし休憩所でおこなわれていました。冷房の効いた室内なので、快適にふれあい体験が楽しめます。

実は、これは来園者のためだけではありません。猛暑の中では、モルモットたちが強いストレスを感じてしまうため、動物福祉の観点からも屋内での実施はとても大切な取り組みなのです。

涼しい室内で快適に体験中。なお、ふれあい体験は事前予約制です。
涼しい室内で快適に体験中。なお、ふれあい体験は事前予約制です。
モルモットになるべくストレスを与えないために、カゴにいれてやさしくふれあいます。
モルモットになるべくストレスを与えないために、カゴにいれてやさしくふれあいます。

ペンギン展示もリニューアル!

野毛山動物園では、施設だけなくペンギンの展示も新しくなりました。私がとくに感心したのは、その背景の絵です。

ペンギンと聞くと、氷の大地にすんでいるイメージを持ちませんか? じつは氷のある地域にくらすペンギンはほんの数種だけ。ここで飼育されているフンボルトペンギンは、南米ペルーやチリの海岸に生息していて、背景に描かれた砂漠のような景色こそ、彼らの本来のすみかを表しているのです。

つまり、この展示はまさに自然の中にいる姿を再現した、とてもリアルな空間。ペンギンの意外な生態に気づける展示になっています。

フンボルトペンギンの故郷は、こんな荒涼とした景色なのです。
フンボルトペンギンの故郷は、こんな荒涼とした景色なのです。

ペンギンの名前当てに挑戦しよう!

ペンギンの観察をするときは、ぜひ「名前当て」にチャレンジしてみましょう。すべてのペンギンには愛称があり、翼にはめられた色つきの輪の組み合わせで見分けられるようになっています。飼育員さんが手作りの識別掲示もあるので、それを見ればすぐに名前がわかります。

名前がわかると、その子の性格やペアの関係まで見えてきて、ただ眺めるだけよりも、ずっと深く楽しめる観察になりますよ。

飼育員さんの手作り看板。翼の色の輪の組み合わせで名前がわかります。
飼育員さんの手作り看板。翼の色の輪の組み合わせで名前がわかります。
右の翼に青と黄色の輪はオスのアポロ。左の翼に白い輪はメスのマリンです。この2羽はペアのはずですが、なんだかケンカでもしたんでしょうか?
右の翼に青と黄色の輪はオスのアポロ。左の翼に白い輪はメスのマリンです。
この2羽はペアのはずですが、なんだかケンカでもしたんでしょうか?

動物園の大切な取り組み

動物園の大切な取り組みの1つに、「絶滅の危機にある動物を増やし、いつかは野生へ帰す」というのがあります。野毛山動物園でもさまざまな動物でその努力が続けられていますが、ミヤコタナゴもそのひとつです。
ミヤコタナゴがいる建物。ちょっと地味で目立たないかもしれません。
ミヤコタナゴがいる建物。ちょっと地味で目立たないかもしれません。

ミヤコタナゴは、国の天然記念物に指定されているコイ科の小さな魚で、現在、千葉県と栃木県の一部にしか生息していません。かつては、野毛山動物園がある横浜市にもミヤコタナゴが生息する池がありましたが、埋め立てられて姿を消しました。そのときに救い出された魚の子孫が、今もここで大切に守られています。

国の天然記念物のミヤコタナゴ。とても貴重な魚です。
国の天然記念物のミヤコタナゴ。とても貴重な魚です。

「どうぶつガイド」は必見イベント

動物園をもっと楽しむための最後のポイントは、「動物園主催のイベントに参加すること」です。野毛山動物園では、毎日、担当の飼育員さんによる「どうぶつガイド」が行われていて、これがとてもおもしろいのです。たとえばこの日は、ルリゴシボタンインコのガイドを聞きましたが、鳥たちが快適に暮らせるように、飼育員さんが日々どのような工夫や努力をしているのかがよく伝わってきました。どうぶつガイドは毎日午後に2回から3回、いろいろな動物を対象に行われていますので、ぜひ参加してみてください。
ルリゴシボタンインコの「どうぶつガイド」。とてもわかりやすい解説で勉強になります。
ルリゴシボタンインコの「どうぶつガイド」。
とてもわかりやすい解説で勉強になります。

野毛山動物園は動物園デビューに最適!

横浜市には、野毛山動物園の他にも金沢動物園とよこはま動物園(ズーラシア)があり、それぞれ特色があります。野毛山動物園は、ライオンやゾウといったメジャーな動物はいませんが、絵本に登場するキリンやクマなどを間近に観察することができます。また、アクセスが良いこともあり、小さなお子様の動物園デビューには最適な場所だと思います。
小さなお子様にも動物がよく見えるのが野毛山動物園です。
小さなお子様にも動物がよく見えるのが野毛山動物園です。

また、野毛山動物園の近くには、「のげやま子ども図書館おやこフロア」(中央図書館1F)もあります。おでかけの際はあわせて立ち寄るのもおすすめです。その日に見た動物を図鑑で確認すると良いかもしれませんね。

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