
落ち葉や木の実で遊ぼう!
“公園のまち”横浜で育むこどもの感性

都市の便利さと、緑の豊かさが共存する環境は、横浜ならでは。緑区にある東洋英和女学院大学の三上慧准教授に、落ち葉や木の実を使った親子で楽しめる遊びについて、キャンパス内の図工室に伺い、教えていただきました! また、こどものうちから自然と関わること、研究分野の「木育」についてもお聞きしました。

三上慧(みかみ・けい)
東洋英和女学院大学 人間科学部 保育子ども学科准教授。大学時代は美術(彫刻)を専攻し、筑波大学大学院で博士号を取得。木と対話する木彫制作の経験から、木の生きものとしての温もりに可能性を感じ、現在は東洋英和女学院大学 横浜校地で「木育」について研究しながら、保育者養成課程で幼児造形の指導法などを担当している。
※2026年度より、人間社会学部 総合心理学科、子ども教育学科、国際学科(設置構想中)で募集予定です。
「木育」って?
2004年に北海道で生まれた言葉で、私たちの暮らしを木(自然)との触れ合いから見直す教育の考え方。
こどもをはじめとする全ての人々が「木とふれあい、木に学び、木と生きる」取り組みです。
親子で一緒に!
落ち葉や木の実で、作って遊ぶアイデア3つ
親子で一緒に楽しめる、落ち葉や木の実で作って遊ぶアイデアを年齢別にご紹介します。完成した作品だけではなく、ものづくりに向き合うこどもたちの姿や声にたくさん反応してあげると、自己肯定感も高まっていきます。「ここが上手くできなかった」と言われた時は、例えば「そうか。○○ちゃん、そっと優しく触っていたね。私はこの葉っぱと木の実が、仲良く隣り合わせになっているところが好きだな」など、具体的に会話を楽しんでくださいね。
0~2歳児向け
持ち帰った自然とお家で触れ合う。入れて飾って、見て楽しむ。
外では、並べたり、重ねたり、組み合わせたり、足で踏んだり、舞い上げたり……。外で楽しんだ後は、お家に持ち帰ってみましょう。玄関に置いたり、窓際に飾ったり、いろんな楽しみ方を見つけてください。

<用意するもの>
- 空き瓶(ガラスでも、プラスチックでも)……好きなものを一つ
- はさみ……必要に応じて
- 落ち葉
- 木の実(冷凍か煮沸済みのものが◎)
- 花びら
- 木の皮
- 枝
- つた など……好きなだけ
<作り方>
①空き瓶を選ぶ。ジャムの瓶やプリンの容器など、ご自宅にあるものでOK。

②落ち葉や木の実を並べて、好きなものを選びながら空き瓶に詰めていく。
落ち葉は使う前に分厚い本に挟んでおくと、平たい状態で保存できます。どんぐりなどの木の実は、あらかじめ冷凍か煮沸をしておくと、虫が出てこなくなりますよ。


③完成!
それぞれの個性にあふれた作品が出来上がります。お家の好きな場所に置いて、楽しんでくださいね。
★空き瓶以外にも……。

3~5歳児向け
自然を食材に見立ててみよう! お弁当作り
葉っぱはほうれん草、どんぐりはお米、木の皮はベーコン、花びらはりんご……と自然を食材に見立てることで、五感で想像する遊びになります。季節や場所によって色や形が変わるので、一年中楽しめますよ!

<用意するもの>
- お弁当箱(お菓子の空箱でもOK!)……好きなものを一つ
- はさみ……必要に応じて
- 落ち葉
- 木の実(冷凍か煮沸済みのものが◎)
- 花びら
- 木の皮
- 枝
- つた など……好きなものを好きなだけ
<作り方>
①まずは、お弁当箱を選ぶ。
本物のお弁当箱を用意するのが難しい場合は、お菓子の空き箱でももちろん大丈夫です。

②好きな落ち葉や木の実を選びながら、お弁当箱に詰めていく。
「これ何に見える?」と聞きながら、自然を食材に見立てて、好きな食べ物の話が膨らみますね。


③完成!
出来上がったお弁当を並べて、手を合わせて、いただきます! そして、遊びの最後には、ごちそうさまでした!
3~5歳児向け
好きな色で、ペタペタ楽しい! 葉っぱスタンプ
「葉っぱの形や柔らかさは、どんな風に違うのかな?」「裏表ではどう?」「厚みは?」ぜひ、観察しながら取り組んでみてくださいね。
<用意するもの>をカバンに入れて持っていけば、外でも遊べますよ!

<用意するもの>
- 画用紙(折り紙など、家にあるものでもOK!)……1枚
- 新聞紙
- 100円ショップのスタンプ台……何個でも
- 葉っぱ(押し葉にはせず、生のもの)……何枚でも
- ノートやバインダー(外で遊ぶなら、下に敷いて机代わりに)
<作り方>
①テーブルの上に新聞紙を広げて敷き、画用紙、スタンプ台、葉っぱを手前に置く。
②葉っぱにスタンプ台を軽く押し当て、全体に、端まで色をつける。
「お子さんは葉っぱを押さえる」「ママ・パパは色をつける」またはその逆など、やりたい気持ちに合わせて共同制作してみてください。「ポンポンできてないところあるかな?」と声を掛けながら進められるといいですね。

③色をつけたほうを下にして、葉っぱを画用紙に置いて手の平で押さえる。上からいらない紙を載せてから押さえると、手が汚れにくいです。最後は、しっかり色が移るようにアイロンがけのようにこすりましょう。

④破れないようにゆっくりとはがす。心ゆくまでペタペタスタンプしたら、完成!
画用紙はフォトフレームなどに入れれば、お家に飾ることができます。

★色がついた後の葉っぱも、面白いんです!

今回紹介した3つのアイデアは、季節ごとに違った風合いを楽しめます。お子さんの年齢や興味に合わせて親子で協力しながら、ぜひ作ってみてくださいね。
また、自然と関わることで育まれる力や「木育」の魅力、横浜の恵まれた自然環境について、三上先生にたっぷりと語っていただきました。きっと今日から、公園や自然の中で過ごす時間がもっと楽しくなるはず。
五感を開き、耕すことで育まれるもの。
小学校で一人一台タブレット端末が配られる時代です。ただ、画面の中に葉っぱを映すことはできても、そこから匂いはしないし、触れないし、隣り合っている葉っぱと葉っぱの違いを感じることもできませんよね。やはり、本物に触れ、自分の体を通して五感で感じるという経験は大切だと思うんです。
こどもたち自身にも、もともとそうやって五感で感じる、そして楽しむ能力が備わっていると感じます。例えば、石や葉っぱでも、積み木・粘土・絵の具でも、何でも手のみならず顔や体で触れて、いろいろなものと五感で対話してお友だちになっていく過程は、とても尊いです。自分の体を通して、それぞれの“気づき”を得ているんですね。
そんなこどもたちの五感の発達を手助けするには、「大人も一緒に触れてみる」のがいいと思います。“気づき”を親子で共有しながら、五感が刺激される体験を楽しめますよ。「見てみて」「聞いてごらん」「触ってみて」「どんな匂い?」「不思議だね」「きれいだね」「あったかいね」「冷たいね」……。そんなやりとりをしながら、世の中にはすべすべ、つるつるといった気持ちの良い素材だけでなく、ざらざら、ごつごつ、でこぼこといったおもしろい触り心地のものもあるんだ! ということを体験していけるといいですね。触れて感じる身体的な経験が、生きていくために必要な力として積み上がっていきます。
私の研究分野である木育は、意識一つで始められる身近なものです。「特別な知識が必要?」と思われる方もいるかもしれませんが、大切なのはお子さんと並んで一緒に感じるのを楽しむことです。大人も五感を開いて耕すことで、リラックスしたり、リフレッシュしたり、前向きな気持ちになれたりします。身近な自然の息吹や、植物の命のあり方に心が向くと、人間は自然の一部であることを思い出して、今まで気に留めなかったものへの気づきや感謝、尊敬する気持ちが生まれてきます。

肩の力を抜いて、気軽に始める木育のすすめ
木育は、あまり難しく考える必要はありません。こどもと一緒に外に出てみる。そして、深呼吸をして、自然の太陽の光を感じて、風の匂いを嗅いでみる。裸足で土や芝生の上を歩いたり、樹木に抱きついたりするのも気持ちいいですよ。
そして、いつもなら気に留めずにサッと通り過ぎてしまうことを、立ち止まって一緒に意識してみる。「どんな匂いかな?」「面白い音がするね」と親子で話しながら木々や草花に触れてみると、いろいろなものへの興味を広げるきっかけになりますし、誰かの言葉ではなく、自分の言葉で考えを伝える力にもつながっていくと思います。
生まれた時からデジタルなものが身近にある環境で、自然に対してあまり興味を持てないお子さんもいるかもしれませんね。でも、自然にあふれた場所に行くと、こどもたちは自分自身で面白さを見つけられるんです。まずは、近所の公園でも「市民の森」でもいいので、気軽に出かけてみてはどうでしょう。そこで見つけた落ち葉や拾った木の実などを思い出に持ち帰り、暮らしの中で飾ってみると、「また行こうね」という会話にもつながっていくかもしれません。

自然が教えてくれる「みんな違って、みんないい」
3つの遊びアイデアをご紹介したように、葉っぱや木の実などを使って、造形的な遊びをしてみるのもおすすめですよ。自然の中では、想像と違う予測不可能なことが起こるので、工夫しながら考える力を育む要素があると思っています。それがワクワクや多様な表現にもつながります。
アートや表現には、一つの正解があるわけではありません。こどもの数だけ無限の遊び方があります。こどもは常に何かを表現していて、自分自身で気づきを得たり、感じたり、生き生きとしている姿を見ると、こどもが安心して感覚を開ける環境を作ることが大切だと感じます。一緒に過ごす大人も、大切な環境の一部ですね。
一本の樹木でも同じ葉は一つもなく、それぞれ個性を持っています。「みんな違って、みんないい」のはこどもたちも同じ。大人の考えも、そして子育ての形も多様であっていいと思い出させてくれます。自然との触れ合いは、そんな多様性も感じられるいい機会です。

都市の便利さと、緑の豊かさが共存するまち・横浜
感覚を開くこと、木育についてお話ししてきましたが、横浜は自然と触れ合うのにぴったりなんです。横浜は大都市でありながら、緑の豊かさも両立しているのが大きな魅力ですよね。緑区でも過去に「わらアート」(緑区産のわらや竹を使用し、田んぼで巨大なアート作品を制作する企画)の展示をされていて、私も見に行ったことがあります!
「市民の森」は、ボランティアのサポーターの方が手を入れていただいているおかげで元気な森が保たれていますし、身近な公園でも緑がいっぱいです。今は小学生になった私の娘も、保育園児時代は冒険気分でのびのび遊んだのが思い出に残っています。五感で楽しめる環境がたくさんある横浜は、恵まれているなと思います。
「市民の森」って?
1971年に始まった横浜市独自の制度。土地の所有者の協力を得て、緑を守り育てる取り組みです。2024年4月現在、43カ所が「市民の森」として指定されています。「市民の森」については、こちらのミニコラムでも紹介しています。お近くの市民の森を探してみてくださいね!
「GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)」も楽しみですね。「Kids Village」「SATOYAMA Village」「Craft Village」など、テーマごとに区切られたエリアがあると聞き、まさに子育て世代が遊びに行けそうなイベントだなと思っています。
「GREEN×EXPO 2027
(2027年国際園芸博覧会)」って?
私たちの生活に大きな影響をもたらす気候変動に着目。環境と共生し、市民と共につくる“環共”(※)を感じられる、日本で初めての国際博覧会です。「GREEN×EXPO 2027」については、こちらのミニコラムでも詳しく紹介しているので、ぜひあわせてチェックしてみてくださいね。
※環境と共生し、市民の皆様と共につくることを意味する造語。

(編集部まとめ)
デジタル化が進む社会だからこそ、こどものうちから自然と触れ合い、自分の体を通して得られる感覚は、とても貴重で大切なもの。大都市でありながら緑あふれる横浜は、木育にぴったりな恵まれた環境です。ぜひ、身近な公園や「市民の森」に出向いて、親子で一緒に五感を開いて、耕し、作って遊ぶアイデアと併せて楽しんでくださいね!
※横浜市内の公園は、葉や木の実などは落ちているものであれば拾って持ち帰ることができます。ただし、思いやりを大切に。「生きている葉っぱや花は取らない」「木になっている実を枝のまま取らない」などのマナーを守りましょう。