
親子をつなぐ絵本の時間。
専門店に聞く、読み聞かせと絵本選び。

親子で楽しむ読み聞かせのひととき。こどもとの暮らしに絵本を取り入れたいと感じている人も多いのではないでしょうか。港北区の絵本・児童書専門店「こどもの本のみせ ともだち」店長である密本千種(みつもとちぐさ)さんは、自身が子育て中にこの本屋に出会い、悩みに寄り添ってもらったことで子育てをずいぶん楽にしてもらったといいます。「地域のほっとできる場所を守りたい」という思いから経営を引き継ぎ、現在はボランティアによるお話会を定期的に開催するなど、こどもや絵本と関わり続けてきました。子育てやお店の経営を通して、横浜との繋がりも深い密本さんに、読み聞かせの楽しみ方や絵本選びについてお聞きします。

上手に読まなくて大丈夫。親の声は、それだけで癒しです。
こどもの頃に読んだ絵本を覚えていますか? 子育ての楽しみの一つが、絵本を介したこどもとの時間。こどもにとっての楽しみはもちろんのこと、親にとっても懐かしい一冊に再び出会い直したり、ホッと温かな気持ちをもらえたりします。
でも、読み聞かせってどのように進めていけばいいのでしょう。良い絵本と出会うコツはあるのでしょうか。絵本にまつわる小さな疑問に答えていただきました。
――読み聞かせを苦手だと感じる人も多いと聞きますが、上手に読むコツはありますか?
絵本の読み聞かせ会に参加されたことはありますか? 親御さんたちの中には、家でも園や図書館などの読み聞かせ会のように、と思う方もいらっしゃるようです。でも、全くそんなことはないんですよ。
まず大切にしたいのは、読み聞かせは「親子で一緒に楽しく過ごす時間」だということ。コミュニケーションですから、やさしい気持ちを育んでほしい、内容を理解してほしいと願いを込めすぎないで。それらは、こどもが楽しんだ先に自然と感じ取っていくものだと思います。
抑揚をつけなくちゃ……とか、読み方が上手じゃない、などと気にする必要もありません。こどもにとって、ママ・パパの声は何より心地いいものです。

デジタル絵本は、リアルとの「使い分け」がカギ
――最近はデジタル絵本も少しずつ浸透してきました。横浜市の図書館でも電子書籍サービスが始まっており、足を運ぶ手間がなく便利なようです。
スマホやタブレット等で絵本が読める時代なんですね。書店や図書館などのリアルな場所では、実際に手に取りながらめくり、絵を見て選ぶ楽しみがあります。一方で、便利な手軽さもありがたいものです。
デジタル絵本は、外出先や忙しい時に大きな力になってくれそうですが、毎日そればかりでは、ちょっと味気ないかもしれませんね。どちらかと決めるのではなく、シーンに応じて選ぶようにるすと、デジタルも書籍も偏りなく楽しめるのではないかと思います。
一緒に絵本を読む時間が、世界を広げるきっかけに
――そもそも、絵本を子育てに取り入れることで、どんな良い面があるのでしょうか。最近は動画、アプリなどのツールも増えてきましたが、それらとの楽しみ方の違いはありますか?
絵本は「楽しませてもらう」のではなく、こちら側のペースで楽しむことができます。好きなページを行ったり来たりしてみたり、わざとじらすようにゆっくりページをめくったり。一緒に同じものを見ることで、親が隣でふふふと笑ったら、「あ、ママはこんなところが面白いんだな」って気づいたり、親は「この子はこれが好きなんだな」と嬉しくなったりもします。「◯◯どーこだ!」と、一緒に指差しをするだけでも、こどもは夢中になりますよね。
わたしも息子が小さい頃、全てのページにてんとう虫が隠れている絵本がお気に入りで、「あ!いた!」って探しながら読みました。分かっていても、やっぱり盛り上がるんです。そこから、お出かけ先でも「てんとう虫いるかなあ」と会話が始まりますし、一冊の絵本から世界が広がっていくのを感じられます。

たくさんの中から、良い絵本に出会うために
――絵本の数がありすぎて、どう選ぶか迷います。良い絵本に出会うにはどうしたらいいでしょうか。
まずは、ママ・パパが好きな絵本を選ぶ。これでいいと思います。お店に来たお客様から「トイレトレーニングにぴったりの絵本はありますか?」「歯磨きが好きになる絵本を探しています」と尋ねられることがありますが、絵本は目的や役割を求めて読むものではなく、心で楽しむものです。
そのうえで良書に出会いたいと感じるならば、一つはロングセラーのものを選ぶこと。長年読み継がれてきた本は間違いなく理由があります。
もう一つは、絵本専門店や図書館で尋ねてみることです。どちらも、おすすめの本をまとめたリーフレットがあったり、図書館なら司書さんが教えてくれたりもしますよ。地区センターのプレイルームもしっかり選ばれた本が並んでいますし、絵本の閲覧や貸し出しもしています。お話会が開かれていることもあるので、足を運んでみてはいかがでしょう。

(編集部締め)
絵本の読み聞かせで、本好きのこどもに育つかは誰にもわかりません。けれども、「そのひとときは『ママやパパといる時間って楽しいな』という気持ちに繋がります」と密本さん。ただ好きだから読む。楽しい気持ちでページをめくる。その先に、親子の大切な思い出が重なっていくのかもしれません。
最後に密本さんに、読み聞かせで気になる疑問や不安をお聞きしました。
教えて!
読み聞かせにまつわる小さな疑問Q&A
Q1 絵本も読んでほしいと思っていますが、読んでとせがむのは図鑑ばかりです。
A1
図鑑が大好きな子は多いですね。親にとっては文字も多いし、どこまで読んだらいいの!?って困惑する気持ちもわかります。
まずは、「それはダメよ」と否定せず、どんな本でも読んであげたいですね。「この図鑑も読むけど、ママはこっちの絵本も一緒に読みたいな」と抱き合わせで一冊選んでみるのはいかがでしょう。
Q2 同じ本ばかり繰り返し読みたがります。
A2 その絵本が大好きなんですね。ぜひ、満足いくまで読んであげてください。大人には分かりきった展開が、こどもにとっては安心感であり、「やっぱり!」「ほらきた!」という喜びでもあります。でも親御さんが飽きる気持ちも分かります。「またこの本?」と言わずに、まずはその本を読み、それから「こっちも読んでいい?」と伝えてみるといいですね。
Q3 読み聞かせ中、勝手にページをめくってしまい、最後まで聞いてくれません。
A3 「めくらないで」「ちゃんと聞いてね」と無理強いしても、あまりいい結果にはなりません。今は読み聞かせを必要としていないのだと割り切って、「じゃあ今日はおしまいね」と切り上げましょう。集中しないときも同じです。
Q4 年齢や発達度合いなど、その子に合わせた絵本を選ぶにはどうしたらいいですか。
A4
まずは、絵本に年齢の決まりはない、という前提をお伝えしたいです。
こどもは、最初は親と自分との二人だけの世界から始まります。そこから、オノマトペ(音や感情、動作を言語化した表現)や色の面白さを知り、家族、家の中の世界、ご近所、お友達との関係性……といったふうに広げていきますから、子どもが触れる世界に合わせて選ぶのもいいですね。
目安としては、裏表紙に「2〜3歳から」「年少から」と書いてあるものから選ぶと分かりやすいと思います。また、絵本の出版社や専門店などによる、年齢別の絵本の定期便「ブッククラブ」の一覧も参考になります。
親はつい、長く読んでもらえるようにと年齢よりも少し背伸びした内容の本を選びたくなりますが、5歳の子が2〜3歳向けの絵本を選んでもいいのです。むしろ、今しか味わえないものを楽しみ尽くしてほしいです。
Q5 こどもに大人気だという本を選んだのに反応がイマイチです。
A5 世間で広く良いと言われているものをこどもが気に入ってくれないと、ちょっとがっかりしますよね。でも、「うちの子には良さが分からないのかな?」なんて思わないで。どんなベストセラーでも、全てのこどもに当てはまるとは限りません。私も、有名な作品の良さが理解できなかった経験がありますし、そう言われるとママ・パパだって思い当たること、ありませんか?
Q6 読み聞かせで特に押さえておきたい注意点はありますか?
A6 読み終えたあとに感想を聞くのは避けたいですね。無理に言葉にしようとすると、本当の気持ちが分からなくなってしまいます。大人でも、心の中にじんわりと広がる「なんか好きだな」「おもしろかったなあ」という気持ちを、すぐには言語化できませんよね。もちろん、「こんなところがおもしろかった!」と言いたい子の場合は、耳を傾けてあげてくださいね。
横浜にまつわる作家のおすすめ絵本3冊

「植垣歩子さんは、この『ともだち』の看板も手がける絵本作家さんです。たてのひろしさんは、写実的な絵で知られる横浜出身の絵本画家、熊田千佳慕(くまだちかぼ)氏に師事した絵本作家。こがようこさんは、保育士の経験を活かしながら絵本作家以外に、紙芝居や読み聞かせを全国に届ける活動もされています」

お話を聞いた人
「こどもの本のみせ ともだち」店長・密本千種さん
神奈川県横浜市港北区日吉本町2−44−10
市営地下鉄グリーンライン日吉本町駅より徒歩約4分
東急東横線日吉駅より徒歩約15分
営業時間:11:00〜17:00(土曜のみ13:00〜)
定休日:日曜、祝日